金閣寺ー三島由紀夫
よくある読書録を、僕もつけてみようと思う。
読んだ本なんて他の人へアピールすることではないと思うが、本への印象や読んだ直後の瑞々しい感覚などは、自分にとって保存していくことに価値があることだと思ったので、つけてみる。つまり、読んだ人をターゲットにして書くため、ネタバレなどは全く気にしないことにする。
意外と2日か3日と、すんなり読めたことが驚きだった。
若い吃音障害のある学僧が金閣寺の美にとらわれ、その美が自身の生に覆いかぶってくるという妄念から逃れるために金閣に放火してしまう、という話である。
僕は再建されてからの金閣寺しか当然知らないわけだが、金閣寺へは何度も足を運んだことがある。それにしても、三島由紀夫の金閣寺の描画は凄まじい執念のようなものを感じさせるほどのものであった。
人間が、あのような悲惨な事件を起こしてしまうまでの精神的描写も激しく、かつ飛躍なく描かれているため、あろうことか共感を伴って読めてしまった。これは、自身のうちにある黒い部分に気付かされたような、そんな独特な体験であった。
人間、自分にだけ明確すぎるほど見える自分のコンプレックスは、きっと誰にでもあるんだろうと思う。そして、そのことが気づかぬうちに自らの精神に影響を与えていることも多くあるだろう。金閣寺に出てくる若い3人、私、鶴川、溝口は全てコンプレックスを持ち、しかしそれぞれ、とても異なった対処の仕方をしている。
最後、主人公は死のうとして、扉が開かないために死ねず(それもなんというか、完璧主義的すぎるとも思えるが、)タバコを吸い、生きようと思った。ここには非常に残酷な事があり、彼が意を決して生きることに決めても、結果として彼が生きていくのは牢屋の中になってしまう。これは非常に残酷である。
兎にも角にもなかなか余韻の残る話だった。これが全く共感できない幸せな人よりも、この話に共感できてしまう不幸な人と僕は一緒にいたいとぼんやり感じる。